ここは過ぎ去りし時の書と呼ばれる場所である。
――序章
- 昔々、とある王国で勇者が誕生しました。
その噂を聞きつけた魔王は、勇者をその王国ごと闇に葬ろうとしました。
襲い来る魔物の大群は一夜にしてその王国を滅ぼしたと言われています。
しかし、皆に守られた勇者は生きており、魔王に気付かれることなく、ひっそりと育て上げられました。
そして、成長した勇者は信頼の置ける仲間と共に魔王を、更にその魔王の上の邪神ですら倒したのです。
こうして、過去の伝説の通り、光が闇を打ち破り、世界は平和へと導かれたのでした。
めでたしめでたしで終わる物語。
ここから先、綴るは伝説の物語の枠外での出来事。
語られることのない勇者の葛藤です。
訪れ来る時を見つめて
勇者という大役を
もって生まれた君へ
紺碧の盗賊
彼奴を初めて見たとき、とても頼りないと思った。勇者は不幸を呼ぶ悪魔の子と呼ばれ、大国という強力な組織から追われる羽目になった。信じていたものに裏切られたのだ。そのお陰で自己の立ち位置が曖昧になり、捨てられた子犬のようにフワフワと彷徨ってい…
萌黄の武闘家
高貴な塔の上階、暖炉の火に照らされながら、スヤスヤと腕の中で眠る赤子を見つめていた。「この子は勇者なの?」 抱いている母の指をキュッと握ったままの赤子の手には見慣れぬ痣がある。それは一種の紋様のようであり、これこそが勇者の証と言われている…
紅葉の魔法使い
「………」 熱で魘されている彼の顔を拭いてやる。まさか、倒れてしまうなんて思わなかった。ベロニカとセーニャは高い山育ちだったし、麓に降りるにはこの過酷な雪原をよく利用してしたので慣れっこであった。暖かい地域の城育ちであるマルティナが『結構肌…
深緋の賢者
今は亡き王国ユグノア。この地に孫を呼び共に旅をして、どれぐらいの年月が経ったのであろうか。キラキラと光り輝く姿に目を細める。 孫に初めて両親を紹介した時、少しキョトンとしていた。まぁ無理もないだろう。まだ、生まれたてで首がようやく座った頃…
若葉の僧侶
竪琴を奏でるは悲恋の歌。もう二度と会うことのない亡き恋人への弔いの歌。 何故彼女であったのか、何故気づく事ができなかったのか。何度自己を責めても彼女は帰ってこない。知りたくなかった双子の意味を…。それは恐れていたことだから、考えないように…
青藍の旅芸人
皆が寝静まった夜。シルビアは眉を大層に寄せて渋い顔を作っている男に話しかける。「もう答えが見えているのに何をためらっているのかしら」 男は相変わらず答えない。明日はもうリベンジすると言うのに…。シルビアはビシッと指差し、眉間のシワをグリグ…
漆黒の戦士
あぁ、勇者というものはこれほどまでに強いものなのだろうか。グレイグがゆっくりと跪き、到底許されぬことをした非礼を詫びる。どんな仕打ちを受けても文句は言えない、それこそ死して償わなければならないことだ。しかし、彼のとった行動は手を差し伸べる…
紫紺の勇者
人の記憶というものはとても曖昧で、凄く危ういものらしい。鮮明に記憶しているつもりでも、時の旅を終えた後の記憶はとてもフワフワしていた。 過ぎ去りし時を求めて、ここまで来たというのに、そのことが起こってそうだったと思い出す始末。何とか、一番…
勇者を救いたいと
願う仲間たちより
- ※DQXIの二次作置き場です。
プレイ中に思ったことを並べた短編連作です。
XISの追加シナリオと矛盾があるかもしれません。
EDの独自解釈で展開していきます。ご了承ください。