目が覚めたとき目の前に見える風景に呆然とした。
ここは何処なのか何故こんな所にいるのか、理解できないている。
「僕は…」
自分は誰なのかと考えとき、ちゃんと名前が出て来たから安心した。
けど、それ以上事は何も思い浮かばなかった。
(お腹が空いた…)
そう思い、ゆっくりと立ち上がり辺りを改めて見渡す。
辺りには何もなく木が森を作るベく生い茂っていた。
ふらふらと食べ物を探しにさ迷い歩む。
ガサッと音がして振り返る。
「モンスター…?」
向こうも空腹だったらしく舌なめずりしながらこちらに向かってくる…。
「いっ嫌だ」
逃げるが向こうの方が身軽なのか、回り込まれ、体当たりを喰らった。
「うわっ!?」
ころころと飛ばされた勢いで転ぶ。
それを見てかチャンスとばかりに今度はキンっと爪を立てて襲い掛かる。
(っ!?)
一応本能的に防ぐがあまり意味はなく、全身を走る激痛に意識を奪われた。
どれぐらい気を失っていたのか「キューキュー」と言う鳴き声で目が覚めた。
「…あ…れ?」
衣服は破れているし、多少痛みは残るものの傷は癒えていた。
(ミスッたのかな?)
取り敢えず幸運に恵まれたと思い深く考えず安心した。
「キューキュー」
再び鳴き声がして視線を下に移す。
そこには一匹のネズミが心配そうな目で見つめていた。
「!?…ネ・ズ・ミ?」
ぼんやり呟くとネズミはまたキィキィと鳴いて、エイトの周りをくるくると回る。
そして、勢いを付けて体を攀じ登った。
「わっ!?」
こそばくて、ネズミを捕まえようとしたが逃げ足が早くなかなか捕まらない。
そのうち再び飛び降りたかと思うとタッタッと軽快に走り出した。
「待って」
魔物に襲われる恐怖より好奇心が先立ちエイトはネズミを追い掛けた。
いや、好奇心というか、どちらかと言うと、どうしたら良いか解らない暗闇と孤独という淋しさから逃げたしたかったのかも知れない。
疲れた体に鞭打って必死にネズミの後を追い掛けていくと何やら人影が見えた。
誰だろうっと思う。
ネズミがその人影へ走って行くのが見える。
「………!?」
っと、エイトがその後に続き近づくと、背を上げその巨体を現す。
エイトは驚きのあまりその場に固まる。
男は調度魔物と戦っている最中だったらしく、少年の行動はかなり魔物に隙を与える形になってしまった。
人影の制止の声も空しく魔物は少年へと体当たりした。
ガハッと、跳び起きた。どうやら屋根のある室内みたいだけど記憶にはない。
何処だろうっと考えたが自分の知っている場所などないことに気付いた。
孤独。
コドク。
独りぼっち……
「キューキュー!」
顔を上げ鳴き声のする方に向くとネズミが机の上に居てチーズがあると両手をパタパタさせて鳴いていた。
暫く見ているとチーズを一つ取りもっちもっちと美味しそうに食べ、少年にも食べるよう主張している。
ゆっくりとベッドから移動して席につくと、一つチーズを取って食べた。
チーズがとろりと口の中に広がっていく。
何故か急に泣きたくなった。
何とも言えない気持ちが心の中を駆け巡っていく。
しかし、結局、それっきりで目からは雫も何も流れては来なかった。
暫くここでボーとして居たが主の居ないこの部屋は何とも居心地が悪い。
ネズミの方を見ると2つ目のチーズを食べ終わって満足したのかその場にうずくまっていた。
「ねぇ…キミは僕の側に居てくれる?」
チュウっと眠そうな声が帰って来た。
「ありがとう」
そう呟き、名前考えなきゃっと思った。
うとうとと寝てしまっていたのだろう。
ハッとして目が覚めた。
辺りを見渡してもやはり誰もいない。
ぐるぐると考えても解決の糸口は見つからない。
蝋燭の火は消え、辺りは薄暗くなっていたが徐々に明るくなって来たことから夜明けだとわかった。
このままここに居ても何の解決にもならない。
行こうか…でも何処へ?
自分の知っている場所。
今は何処も思い出せないけど知っている場所に出ればわかるかもしれない。
「トーポ行こうか」
チュウ? っと不思議そうに見た。
「トーポは君の名前。ネズミだからトーポだよ」
少年の言葉に嬉しそうにトーポは肩に飛び乗った。
ここから、早く去りたかった。
だってここにあるのは孤独な空間だから…。
言葉の意味を知らなくとも思いはそれである。
不安と彼は安心の出来る場所を探しているのだ。
なおもチーズを食べようとしているトーポを見て5つぐらい手に取りネズミをこちらに誘導する。
部屋の外にでると自分が今いる場所は気高い丘の上に建つ小屋だった事を知った。
ふと、絶景の片隅に映る。
遥か遠くの森を超えたところに立派な建物が見える。
何処となく興味がわいた。
敵に弱みを見せずに恐怖心や尻込みは敵に隙を与えてしまう。
じっと見据えて頃合いを見計らって逃げる。
そうすれば最小限のダメージで逃げられるのだ。
また、夜は危険だ。
魔物も凶暴になるし視界が悪い。
何かあっても対処が遅れる。
そう結論付け、少年はその場にうずくまりただ時間が過ぎるのを待ったりもした。
瞳を閉じ目以外の感覚を研ぎ澄まして……。
小屋からでてからのここ数日で学んだ事だ。
じっとしていれば、まず襲われない、気付かれにくい、後ちょっとの辛抱…。
そう心で言い聞かせて…。
何回夜を過ごしたか、ある時、エイトは泉を見つけた。
その場で喉を潤したら疲れていたので、ガサッっという音が聞こえるまで、眠ったように動くことは無かった。
そう、この時エイトは初めて人にあったのだ。
しかも、一国の姫君に…