Lv.xx:そんなひどい。

「死んでしまうとは何事だ!」
「好きで死んだ訳ではないです!」
 見慣れた光景。
何度繰り返されたか分からない。
「嘆かわしい。命をなんだと思っているのだ! 何人も帰ってこぬのじゃぞ!」
「分かっております! これ所持金の半分ですから!」
「これ、話はまだ終わっとらん!」
 互いに互いの反応が投げやりになってきている。
「全く、この御守りも万全ではないというに」

 ハラハラと父である王と勇者様のやりとりを見ていて不安に思う。
助け出されたときは余裕そうで、まさにこの世に舞い降りた救世主、そう思った。
暗い洞窟の奥、己がなぜ生かされているのかも分からず【ドラゴン】に見張られる日々。
心が押し潰されそうな年月を耐えたときに放たれた一筋の光。
その希望の光が勇者様であった。
この胸の高鳴りは本物だが、勇者様は今も尚、傷付き戦っている。
それを祈りながら待つしかできないもどかしさ。

「勇者様…」
「はい」
 次で竜王と対峙することを告げた。
もし我が帰らなければ、次を探せとも。
その言葉の端々に、己の運命を受け入れ、それでも尚、命に従ってくれる強い眼差し。

「ローラはあなたのことをお慕いしております。なのに凄く不安なのです」
 数多くの勇者の一人、されど己には唯一の希望の光、失うのがとても怖い。
誰一人、あの闇の牢獄から連れ去ってくれなかった。
救ってくれたのは勇者様あなた一人です。

「姫、私は結構、好き勝手しておりますよ」
 クシャっと笑いかけてくれた。
彼の心は死んでいない。
そして、既に決意していることが垣間見えた。
なぜそこまでお心を強くあれるのか。
束縛されぬ意思の自由。
自分は選んでここにいるそう言ってくれたように感じた。
使命でもなんでもない、己を助けたのは彼の意思。

「ならば、私も私の意思で全てを賭けましょう」

 

 ついに世界に光が戻った。
あの禍々しいオーラを発していた竜王城から、天高く登る一筋の光、暗くどんより覆っていた雲を突き破り、辺り一面に青い空を覗かせた。
ついに、勇者様が竜王を討伐したのだ。
なぜかそれを知った己の目から涙が溢れ落ちた。
「ありがとうございます」
 誰にも聞かれることのない感謝の言葉が漏れた。

 

 少ししてから、戻ってきた勇者様に激励の言葉をかける王。
もはやこの国の英雄。
在位を譲ることに文句を言うものはいない。

「いいえ。もし私の治める国があるならそれは私自身で探したいのです」

 しかし、父の王への誘いを断り、旅立つと宣言した勇者様。
わかっていた、理解していた。彼が断るだろうということは。
ならば、勇者様は己が支えたいという意志を貫きたい。

「待ってくださいませ! そのあなたの旅にローラもお供しとうございます」

 階段を降り、勇者様に駆け寄る。

「このローラも連れてって下さいますわね?」

 

 はい or いいえ

 

 THE END