DQI

名もなき故郷

 ここはラダトーム城から南南西にある森の一角。人から存在があまり知られていない場所である。そこにこの地の英雄となった勇者アレフとラダトーム城の姫君であるローラが佇んでいた。 船出の時が近付いてきた時、アレフが旅立ちの挨拶をしたい場所があると…

ふっかつのじゅもん

「死んでしまうとは何事だ!」 聴き慣れたフレーズが飛び交う。それを右から左に聞き流して、ついでとばかりに本日の報告をする。王は頷きつつ、その報告を本に記録し、その記録に沿った呪文を唱える。その呪文の名は【ふっかつのじゅもん】である。 その呪…

gift

頂きもの置き場稲野 巧実様

世界を救う勇者を救う者達。

「間に合わなんだか」 預言者ムツヘタ、いや、精霊ルビスに選ばれし賢者は、ルビスの言葉に従い里を駆けていた。ルビスと契約し、己の時を操り無限の生を得た身でも、身体能力は人とそう変わらない。歩む速度がこれ程までに遅く歯がゆいと思ったことはない。…

etc.

DQナンバリングの長編とは世界観が違うものの短編集です。作品が少なくて分類していないのもこちらに収納しています。DQ1,11とDQ7,B1,B2を収納予定。

王の中の王。

 我が名は竜王。気高き信念を持ち、全ての頂点に君臨する王の中の王。人々が栄え、愚かにも衰退していく様を日々目にしてきた。高貴なる存在。 人々は我を恐れ、機嫌を伺う。我が人間如きに左右される訳がないと言うに…。人間共に分かりやすく言うなれば、…

Lv.1:船に乗り旅立った。

 青き空。揺れる旗。遠去かる陸地、白い帆が風に乗っている。ここに使える人は『我こそは』とローラと勇者様を支えてくださる方。己はもう姫ではない。皆に見送られて本当の旅が始まる。「ローラ姫」 すぐ隣で同じ方向をずっと見つめていた彼が静かに己の名…

No.10:光の玉。

「という訳です。使われることはないかもしれないが、また暫く預かって欲しいのです」 導き出した答えを賢者に伝える。「お主らは揃いも揃って無責任だのう」 複数形で語られる。もう片方は恐らく勇者ロトだろう。未来を手渡す選択肢を与えているようで時の…

No.09:ロトの剣。

「あぁ、わかったよ。なぜロトの剣がここにあったか、なぜ虹の賢者がここへ来るように言ったのか」 ここは竜王の玉座。竜王が巨大化したことにより、この部屋の一部が崩れ落ちている。「こんな場所で戦ったのですね」 戦闘の激しさが垣間見えたからか、後方…

No.08:虹の雫。

「雨と太陽が合わさるとき虹の橋ができる」 古い言い伝え。これはロトがこの地に降りる前からある言葉らしい。それに従いロトは賢者に杖と石を託したと言う。「ついでじゃ、これを元あった場所に返しておけ」 投げ渡されたのは太陽の石。扱いが雑だな。国宝…

No.07:妖精の笛。

「そうだ、私が作った」 湖の町リムルダール、古来より湖の島に町を設けることで、外敵から身を守ったと言われている町。そこの宿屋の特別室に住んでいるのは、よしりーん——妖精の笛のありかを教えてくれた老人。「あのゴーレムは人が作り出したのか?」「…