Lv.19:ベギラマを覚えた。

「致し方ない! ベギラマ!」
 ベホイミを使われる程、厄介なものはない。
少し剣で削り、トドメにこの攻撃魔法を使う。
ギラに比べ遥かに性能は良いが、不安定なのは変わらない。
消費も約二倍半だ。
多用すると直ぐに魔力が底に着く。

 上記のような【しにがみのきし】に対しての戦略ができてきた頃、竜王城の地下も深いところまで行けるようになった。
【ストーンマン】にはラリホー戦法。
状態異常耐性のある【しにがみのきし】には先手必勝。
【ダースドラゴン】にはガチンコ勝負。
ロトの剣を手に入れてから、それらの強い敵とも戦えるようになってきた。

 しかし、これだけ探すも竜王が見つからない。
大分奥深くまで歩いていると言うのに。
真っ直ぐ階段を降りる場所があったのだが、特殊な魔力に覆われておりループしていたらしい。
何度か力尽きてからの再挑戦を経験した後に漸く気付く。
もしやと引き返し階段を上ったら、最初に降り始めた階段の入口へと直に戻ったときは、少し相手の術中にハマった気がして悔しかった。
なんと無意味なことをしていたのかと…。

 既に数え切れない数を挑戦した後、最下層にも関わらず、明るい部屋に出た。
キョロキョロと見渡しながら歩く。
途中宝箱を見つけたが良いものは入ってなかった。
呪いのベルト(売ると180G)とかいかにもと言うのを見つけた。
呪われたら来いと言ってくれていた人がいたが、いやこれはあからさま過ぎて使う気も起きない。

「………っ!」
 開けた場所に出た。
断崖絶壁を横からくり抜いたように、日が差し込み毒沼と合わせて緑の芝生が生い茂っている。
庭のように橋がかけられており、そこから遠くにラダトーム城が見えた。
「監視されているようだな」
 思わずそんな言葉が漏れた。
ラダトーム城からは上部の城は見えていたがここは死角となり、見えていなかった。

 中庭の終着点、少し離れたところにある入り口。
その奥に禍々しいオーラを感じた。
いる、最終目標がそこにいる。
今の魔力消費量では、勝てない。
最短で来れるように、ここまでくる道のりを覚えよう。
己の考えが正しければ相手は悠長に待ってくれている。
「リレミト」
 敵前ではあるが脱出呪文を唱える。

 

「良くぞ戻った」
 どこかホッとしたように出迎える姿に、そう言えば、帰還の御守りを使わず戻るのは久しぶりだったことを思い出す。
現状報告と現時点ではまだ不可能だが、あと少しで行けると予想を告げる。
ワンランクアップが必要、やるだけのことはやるしかない。

「勇者様…」
 現状が良好へ向かいつつあるのに、なぜか不安そうに声をかけられた。
首を傾げつつ、側に近寄る。
「ローラはあなたのことをお慕いしております。なのに凄く不安なのです」
 そりゃそうか、あれだけ傷付き帰還を繰り返していれば不安にもなる。
己でもよく無事だと思う。

初めの頃は不安だった。
なぜ己がと言う懸念が拭えなかった。
確かに、伝説やら言い伝えやら予言やらで雁字搦めで、ひたすら竜王討伐に向けて走って来た。
自由というものがないかもしれない。

 勇者とは何か?
どうあらねばならないのか。

 答えは簡単だ。
そんなものは初めから無い。
歴史からは方法を学べども、実行するのは現代の己自身の意思。
昔とは違うのだ。
同じものを求められても無理だろう。

「姫、私は結構、好き勝手しておりますよ」
 姫を助けると言う選択をしたのも…ビビって逃げてたことも、そして前に進むと決めたのも全部自分の意思。
一礼をして立ち去る。

 アレフLv.19、使命完了までもう一踏ん張り。