Lv.3:ホイミを覚えた。

「ここか」
 地下深い洞窟が砂地の中央に聳え立つ。

 進展したのはホイミの呪文を獲得したからだ。
魔力的に一回分しか唱えられないが、窮地に追い込まれても避けられる。
力強い回復魔法である。

『おおカミよ! 古き言い伝えの勇者に光あれ!!』
 そう言い、老人が杖を掲げるとを暖かい光に包まれる。
ラダトームのお城に無償で魔力を回復してくれる老人がおり、魔力の枯渇で宿に戻り、一日を無駄にすると言う手間が省けているのはありがたい。
これもホイミを覚えたことによりできた可能性。
更に行動範囲が広がり、こうしてロトの洞窟へと足を運ぶことができた。

 洞窟内は暗く、松明が無いと辺りの様子がわからない。
最初にラルス王から戴いた松明を使い歩く。
ここは聖なる力があるのか魔物の気配がなく初のダンジョンというより、洞窟探検という印象である。
階数も少なく、これと言った収穫なく、直ぐに最深部に到着した。

「これは…」

 石版を発見する。勇者ロトが残したメッセージが書かれていた。
長いので要約すると『竜王の城へ向かうには三種の神器が必要だから、どこにいるか不明な三賢者の子孫達から貰ってね』という感じだ。

「凄い人なのか、そうでないのか、わからない人だな」
 この時代の悪しきモノ——竜王の復活を予期して、仲間にそれを託したってのはわかるが…。
居場所ぐらい限定するか、いざって時に集まるように仕向けていて欲しいものだ。
これでは手がかりがあるようで何も揃っていないのと変わらないのではないか。

「戻るか…」
 ここは既に最深部、これ以上特に用事がないため、来た道を引き返す。

 勇者ロト。
どんな人物であったかはあまり語られていない。
どこの誰かも不明、その後の人生もしかり…。
突然、空から現れ世界を救い、そして忽然と姿を消した英雄。
平和にした方法は記述に残されている。
『光の玉』と言う魔封じがある神器。
それを掲げ、魔物に侵されていた世界を救ったという。
現在、竜王に奪われたのは、まさにそれである。

 勇者が勇者たる所以。
慢心は死を呼ぶ。諦めは停滞となり滅びとなる。
勇者とは、世界を平和に導く存在。
精霊ルビスの加護に守られし者。
多くの口伝が脳裏を巡る。

「俺は本当に勇者か?」

『預言者により導かれた』
 右も左も分からないまま、突然現れた使者にそう言われた。
信用に足りる存在かすら、わからない。
流されてここにいる、そう言われても過言ではないだろう。
己ですら出生も何も知らないと言うのに、いきなり祭り上げられた現状。
今この時を生きるためだけに、旅立ちを選択し、剣を振るいここに立っている。

 アレフLv.3は自身の謎が深まっただけである。