Lv.1:船に乗り旅立った。

 青き空。揺れる旗。
遠去かる陸地、白い帆が風に乗っている。
ここに使える人は『我こそは』とローラと勇者様を支えてくださる方。
己はもう姫ではない。
皆に見送られて本当の旅が始まる。

「ローラ姫」
 すぐ隣で同じ方向をずっと見つめていた彼が静かに己の名を呼んだ。
そう二人は旅立ったのだ。

「アレフ様、本当に良かったのですか?」
 合わさらない視線。
全ての謎が解決しないままこの旅路を始めてしまう。
国を出ればアルフガルドの勇者アレフではもういなくなってしまう。
いや、その言葉は重荷であったかどうかの質問は、あの時にはぐらかされて結局、聞けないままであった。

 己は彼の意思に従うつもりだ。
この方と共にいると誓ったあの時から全てを捧げている。
だが、今その彼の意思が見えないでいた。
それが怖い。
最大限の力を使って説得するつもりではあるが、それでも彼に拒絶されると胸が痛む。

「私は、これが始まりだと思っています。私はまだ一つの国を救ったに過ぎないと言うことです」
「……まぁ!」
 浮かび上がる謎を謎のままにする訳ではなく。
内側からのアプローチができないのなら、外からと言うわけか。
「恐らくですが、世界の闇、勇者ロトの真相は世界の外にあると思います。装備も揃ってないですしね」
 あぁ、この方はラダトームを救うだけでは満足しない人だったのか、まさに選ばれし勇者。
だからこそ、勇者である実感が薄かったのだ。
まだ所詮始まりに過ぎないと言うのだろう。
涙が溢れてくる。
そっと指を目尻をぬぐい体ごと視線をアレフへと向ける。

「そんなあなたと共にできて嬉しゅうございます」
 改めて、実感する。己はこの方に救われたと。
ならば、己の選択する道は決まっている。
最初は迷惑をかけるだろう。
碌に戦う術を身に付けていなかった。
「私はもう姫ではありません。力もありません。しかし、仲間として共にいさせて下さいませ」
「えっ…はい」
 己の勢いに飲まれたのかあたふたと数歩後ろに下がる。
「敬語もいらないですわ。実は少し苦手なのではありませんか?」
「え、あ、あぁ…」
 己はアレフ様を尊敬しているし昔からこの口調だったので何ら問題ないが、無理して欲しくはない。
頷くのを確認して、ゆっくりと身だしなみを確認して、真っ直ぐに見つめる。
とある儀式のように再度訪ねた。

「アレフ様、ローラを仲間にしてくださりますか?」
「いいえ」
「…そんな酷い」
「いいえいいえ、ローラはもう既に共に過ごす大切な人だ」
「まぁ、私もアレフ様をお慕いしております。ぽっ」

 ローラは仲間になった。

 THE END