お洒落に全力を…

「えー。まだ行くのかよ」
 ここは謎の島と呼ばれる場所。この場所に行く手段は限られており、人を選ぶ。
しかし、一種のビジネスというか、一通りの施設が揃っており、案外便利な場所でもある。
それは何故か、考古学者が真実を求めてこの場所の調査を冒険者に依頼するからである。
ゼルメアと呼ばれる紋章を捧げると幾多の迷路がその場に出現する。
より地下へと迷路を突破していくと、過去の歴史が垣間見える。それを考古学者に報告すれば、嬉しそうに礼が貰える。
しかし、幾多の冒険者が嬉々として潜るのは考古学者の為ではない。それはおまけで真の目的は別にある。

「だって、欲しかった装備が手に入らなかったんだもの!」
 性能は置いておいても、すごく可愛らしい装備があるのだ。
冒険者には衣装にこだわる人と性能にこだわる人に分かれるだろう。中には両方兼ね備える猛者もいる。
その前者の冒険者にはお洒落装備は欠かせない。どんなにレベルが高かろうが、困難な道のりだろうが、手を緩めない。
そのお洒落に追求する熱意は呆れを通り越して笑える。
もちろんお金をかければ簡単に手に入るものも多いが、貧乏冒険者はここに潜るのも一つの戦略だ。
猛者も買えない装備を求めて潜るがそれはまた別の話である。

 そうこのゼルメアはランダムに上級の装備を落としてくれる場所なのである。
どんなカラクリなのかの考察は考古学者に任せる。
冒険者は得られる成果を期待して、手に入れた『ゼルメアの紋章』を掲げ、地下へと潜るのである。
こぞって冒険者は運が絡むこの場所へ潜るので周辺施設が揃ってしまったとも言えるかもしれない。

 ここで言い合っている二人も恐らく冒険者であろう。
「俺も欲しいのがあるから付き合うけど…次でラストだぞ!」
「ありがとう。感謝してる。このあと【コサックシープ】か【笛吹き羊男】狩りに付き合ってくれたらもっと嬉しいかな!」
 ウインク一つをしてから、嬉々としてゼルメアを掲げる。
全く現金なものである。
「押しに弱い性格な自分に腹立ってくるよ」
 ガシガシと頭を掻きながら大剣を背負い直す。
お洒落に全力なのはいいが、いつになったら次へと進められるか不安になる。
すみませんと臨時で雇った人たち二人に頭を下げつつ、共にゼルメアへと潜っていく。

 お洒落、この世界では『独自に装備を組み合わせて、染色し着飾る』ことである。
そのため性能と見た目が不一致なことは多々ある。
お洒落に勤しむその行為をドレア(ドレスアップ)すると言い、その装備をドレア装備という。

 挑むもの達に幸あれ

【お洒落に全力を…】