好戦気質

 突然のことですが異世界に全員呼ばれました。
みんなで共に戦いましょうと言われる。

「共に戦うねぇ」
 初めまして状態でどうしろとという空気が流れる。
「全く何が得意とか、いちいち、話し合うのがメンドくせー。戦ってみりゃ、互いの実力がわかんじゃねーか?」
 ソロは剣を手にかけて言う。
「それは無茶苦茶だ!」
「いや、ある意味、理にかなってるって! クジでチーム戦にしようぜ。どうせ急ぎの旅じゃないんだからさ」
 アレフの反対に、言葉を被せたのは、レック。
やる気なく寝転んでいたのに勢いよく立ち上がり、嬉々として拳を打ち付ける。
「「えぇ!?」」
 そういう展開を予測していなかったアルスとナインはともに声を上げる。
ロトもローレも立ち上がり、やる気を出している。
すっかり、流れがやる方向になったと、どうにでもなれと言うようにアレフは天を仰ぐ。

「では、簡単にクジを作ってみましたので引いてください」
 いつの間に作ったのか、綺麗に九本束ねた棒をエイトは差し出す。
皆、エイトを囲み思い思いの順番でクジを引いていく。

 

チーム赤はアレフ、ローレ、ソロ。
チーム青はロト、アベル、ナイン。
チーム黄はレック、アルス、エイト。
となった。

「何だよ。最初は見学か」
 意気揚々と気合を入れたレックだったが、3チーム中2チームが試合をするとなると、1チーム溢れる。
それに見事に当たってしまったのだ。
最初に9人で単純なルールを決めて、現在それぞれが作戦会議をしている6人を遠巻きに見る。
「いいと思います。先に相手の手の内が見れますから、やるからには勝ちたいですし…」
 胡座をかいて座り込み、膝で肘を支えて台座にし掌に顎を乗せて、不満そうに呟くレック。
立ったまま柔らかく笑ったエイトが答える。
「…ねぇ。どうして試合をしようって言ったの?」
 そんな二人を見比べて、アルスが疑問を紡ぐ。
「んあ? 別に相手を知るのに手っ取り早いだろ」
「…確かに救えし者と一括りにされましたが、まだ互いを互いに知りません」
 分かるのは害にならないだろうと根拠なく告げられた精霊の言葉だけだ。

 そうこう話しているうちにまとまったのか。

「判定よろしくな!」
 ロトが手を上げて、合図する双方に上げ返す。
「任せろ!」
 レックが意気揚々と答え立ち上がる。
「ルールわかるの?」
「参ったって言ったもん負けだ!」
「そんなもん!?」
 レックの言葉に振り回されるアルスにエイトはくすりと笑ってから、試合を始めたメンバーを見る。

アレフ、瞬発性はないものの確実に相手の動きを読み攻撃してくる。
一対一になるのは避けたほうがいいだろう。

ローレ、人の動きがわかるのか猪突猛進のようで、相手の隙を逃さないとばかりに追ってくる。

上記は前衛的な動きをする。
しかし、攻撃だけでなく、アレフが傷ついたローレのフォローを積極的にしている。

対するロトは武器の魔法効果を駆使して直接当たらないように避けている。
相手の攻撃の一撃一撃が重いことを知っているのだ。

「へー! 戦い方に個性出るな!」
 面白くなってきた状況にレックは声を上げる。
ここに来るまでアベルとソロの対魔物戦を見たことがあるレックにとって戦術が異なることに面白さを感じる。

アベルは基本仲間の盾や補助を主としていたが、ナインが加わることで、盾と補助の役割が分散されているようだ。
ナインの世界にある転職というシステムは、完全にそれに見合った形の能力を身につけられるらしい。
現在ナインは補助に特化した魔法戦士らしく、皆の動きを読みながら補助をかけている。
やや打撃威力が赤チームと比べると欠けるという形だろう。
それでも威力はあり油断はできないが…。
対するソロもここに来るまでの対魔物で感じた憎しみからの暴走特攻は抑えられ、回復重視で攻撃重視の二人をサポートしているという感じである。

「単一への攻撃重視の物理特攻型の赤チームと補助魔法中心の魔法防御型の青チームか」
 だいたいわかったなっというようにレックはごろりと横になった。
「審判しなくていいの?」
 と言うか、今の見ているだけで、そこまでわかったのかとアルスは目を白黒させる。
「いーよ。どちらも決め手に欠けるから魔力がなくなった方が負け、魔力が尽きたら青チームが劣勢だね」
 あくまで特色を吟味するだけである。手の内は、最後の奥の手は皆出さないだろう。
「アルスさんは、どんな戦い方をします?」
「あ、俺アタッカーが好きー!」
 エイトの質問にレックが寝転んだまま答える。一拍置いて続きが出てこないようなので、アルスはあたふたしつつ、答える。
「魔法はあんまりかな。どちらかというと特技をよく使う。今は風や水系を扱う特技が多いよ。コーラルレインとか」
 魔法と特技の差は厳密ではないからか、がむしゃらに戦ってきた今、自分の特性はよくわからない。こういう戦いに場に来るのがわかってたら、もっと強くなる職業についておけばよかったな。最もそうなるとわかっていたわけではなかったので、結局は無意味である。
「あ、俺は相手を翻弄さすのも好きだぜ!」
 レックはガバッと起き上がり、アルスの頭を撫でる。
「では、こちらの作戦はレックさん主軸で場を引っ掻き回し、全体に攻撃仕掛けますか。僕自身は一対一より、一対多数が得意ですので」
「おぉーいいな! アルスも相手を翻弄しつつ全体攻撃な」
 アルスに拳を向ける。
アルスも戸惑いながら拳をつける。
なぜか昔を思い出して泣きそうになるのを必死で堪えた。

「おーまーえーらー」
 アレフの声にハッと三人が顔を上げると、ある程度ボロボロの服をまとった六人が見下ろしていた。
「ちゃんと審判しろよ」
 ジト目で見下ろすソロにレックは笑う。
「どーせ引き分けだろー」
 どちらが勝つまでやるなんて、野暮なことはしないだろう。

「その通りだけどね」
「勝てると思ったんだぞ」
 アベルの言葉に少し悔しそうにローレは言った。
実質、ソロの機転で魔力がなくなる前に総攻撃を仕掛けたのだ。
それに気づいたロトが自らが城壁となり、鋼鉄魔法のアストロンをかけたことにより、無効となった。
「最後、危なかったですね。あの後直ぐに反撃出たんですが…」
 ナインの言う通り、すぐさまアベルとナインで反撃に出たのだが…。
「あそこでマホステだっけ? はいつの間にだったよ」
 アベルのバギクロスは無効となり、ナインのギガスラッシュは予測防御をされ、ダメージがさほど通らず、回復されて、一触即発で、六人の集中力は途切れた。

「なるほどなー! じゃ次俺らだな。どっちが相手になってくれるんだ?」
 元気よく伸びをするレックに六人は苦笑いする。
「一晩寝た後の方がいいみたいですよ」
「えー。マジかよー」
 エイトの声にガクッと崩れ落ちるレックであった。
そんな情景を見ながら、やらなくて良かったとアルスはホッとため息をついた。

なんや感やで、みんな好戦的な人達である。

 おしまい。