夕日と階段

 夕日を見ようと思い、城内を駆け足で歩んでいた。
見張りの兵士がミーティアを見ていたがいつものことなのでさほど気にせず重たい扉を開ける。
階段から見る夕日はとても好き。
1日の終わりを告げているかのようにゆっくりと着実に沈んでいく。
下方へ視線を移すと、噴水近くでジャガイモが大量に入っている大きな鍋を重たそうに持ち運んでいるエイトの姿が見えた。

「エイト!」
 気づいてもらうために身を乗り出し両手を大きく振る。
一瞬、何処から声がするのかわからなかったのかキョロキョロと辺りを見渡す。
ミーティアがもう一度叫ぶ前にエイトは彼女の姿を見つけ嬉しそうに笑った。
「大変そうね!」
「そんなことないよ。後は運ぶだけだから」
 手伝おうと思ったけどやんわり断られるので諦める。
少し詰まらなさそうに空を見上げる。
随分と真っ赤な空。
今日やるべきことを済ませたのでミーティアは夕食の時間まで暇になった。
「それ運び終わったら遊べる?」
 ミーティアは身を乗り出しまた大声で話しかける。
ゆっくり慎重に進むのでミーティアとエイトの距離はあまり縮まっていない。
「すぐに夕飯の時間だよ?」
「いいの、少しだけ!」
 だから、早くそれ運ぶの終わらせてね。ここで待ってるから!!
エイトが頷くのを見ると満足したように手すりから乗り出していた体を引っ込めた。

 はじめはエイトが戻ってくるまで待ってるつもりだったけど、
次の仕事を言いつけられては遊べないことに気づく。
それじゃぁ、いつになるわからない。
(そんなの待てない)
 そう思ったら、後は行動にでるだけ…。
壁にもたれていた体をしゃんとして半螺旋状になっている階段を一気に駆け下りた。

「ミーティアも一緒についていくわ!」
「えぇ?」
 階段下近くまで運び終わっているエイトが顔を上げる。
丁度、後数段のところで足が絡まりミーティアがバランスを崩したところだった。
「あっ」
「危ない!」
 ミーティアの小さな声はエイトと慌てた声で消える。

 ガランガランと大きな音と共にミーティアはエイトの上に落っこちた。
鍋から飛び出て四方に散らばるジャガイモ。
2人は目をまん丸にしてその場に固まっている。

「びっくりしたわ」
「僕もびっくりした」
 いまだに強直状態が解けない。

「気をつけないといけないわね」
「そだね」
 そこで、2人はツボを刺激されたかのように笑い合う。

 ものすごい音に聞きつけた兵士が来るまでそれは止まらなかった。

 END–