Lv.16:案外あっけなかった。

「意味がわからん」
 軽い電流が流れているのか歩いている床は一歩毎に体力が奪われる。
自分の体力に気をつけながら向かうは、長老の住む神殿。
勇者ロトの血を引いてると言うのが証明できる印がある場所を知っている唯一の人物。

 教えられたのは細かい数値での位置情報だった。
しかし、比べる場所が遠過ぎて、ここだと言う位置が分からない。
考えながら痺れる床を歩いたせいか気付いたら、ラダトーム城に戻っていた。
爺さんのヒントを聞いた後に死んだわけじゃないからな。
断じて、違うからな……畜生。

「行くか」
 耳がタコになるほど聞いた小言は右から左。
水鏡の盾も無事に手に入れていたので準備万端だ。
向かうは、ドムドーラの町の東側にあるお店の裏手の木。
実は金額を間違えて800Gほど足りなくて、一度無駄足を踏んだときだ。
所持金不足の時にわざわざ来たのに無収穫だとカッコ悪いので、メルキドの町でいろいろ情報を聞いているときに手に入れた情報の一つ。

 勇者ロトが残した伝説の防具があるらしい。
それは、ゆきのふという男の手に渡ったと言う。
ゆきのふはドムドーラの町で防具屋をしていたらしい。
その裏手の木に何かを埋めたらしい。
最後にそのゆきのふが店を出していた場所が、このドムドーラの町の東側と言うわけだ。

 今、ドムドーラの町が滅ぼされて、メルキドへ逃げて来た世代のお孫さんからの話だから、信憑性は微妙だが行くに越したことはない。
何せ、このメルキド周囲のモンスターが強いのなんのって、一戦一戦が死闘で油断すると死ぬ。
常に自分の体力を温存して攻撃に回さないと後手に回るともうダメだ。
ホイミの回復力だと完全に間に合わない。
さらにラリホーやマホトーンの呪文が効かないモノがさらに増えたことでより、出たとこ勝負になってしまう。

 ドムドーラの町を闊歩しているのはほぼそれらと同等の魔物達だ。
ちょっと取りに行くだけでも死闘である。
極力、崩れた家々の隙間をかいくぐり、敵と合わないように走り去る。
「…て、まさか」
 おそらくと思われる場所に灰色の鎧を纏ったモンスター【あくまのきし】が鎮座している。
まるで、その鎧を守るかのように…。
鎧を持ち去らずに上位のモンスターがここで守っているそれだけで信憑性が上がる。
「負けるか!」
 影から不意打ちのように飛び出し、【あくまのきし】に斬りかかる。
相手の攻撃力がやはり回復魔法量を上回っている。
己の体力が持つか、相手を倒すのが先か一心不乱で斧を躱し鎧の隙間を攻撃する。

「………」
 あっけない幕切れだった。
ガシャンと言う音とともに崩れ落ちる【あくまのきし】
思わず、茫然としてしまったが他のモンスターに気づかれたのなら、うかうかしていられない。
土を掘り返すと出て来たのは、宝箱。
その中に鳥の紋様を胸に象られた青い鎧を見つけた。
聖なる加護が宿っているのか手に取ると一瞬だけ輝いた。

(だから、滅ぼされたのか?)

 たったこれだけのために、このロトの鎧が存在したために滅ぼされた町。
竜王にとって最も脅威な防具だった可能性を感じた。

「強くなったな」

 未だに倒すのには苦労するが、しかし先ほどより恐怖を感じない。
ロトの鎧が死期を遠ざけてくれる。

 アレフLv.16、最強防具と言う意味を実感する。