Lv.14:何もなかった。  

「ダメだー」
 ラダトームの町の宿屋。
ごろりとベッド横になる。
何度挑戦しても先に行くことができない。
元ドムドーラの町の近くまではスムーズに行けるようになったが、その先にあるだろうと思われるメルキドの町に行くことができない。

 装備も武器も売っている中で一番高いものになっている。
まさか、魔法の鎧(7700G)まで買えるようになるとは思わなかった。
しかし、進展がない。
「俺は本当に強くなっているのだろうか」
 ゴロリとまた寝返りをうつ。 

 リムルダールの町にいる戦士を思い出す。
彼もその場にずっといる。
あそこから出ることができないのだ。
このままではいけないのは分かっているが、強い魔物が闊歩している場所へ足を運べない。
魔物を楽に倒せる場所でズルズルと居座ってしまう。
誰だって死ぬのは怖い。
だから、動けない。
己も今の現状それと変わらない。
停滞だ。

 未だに活躍しない妖精の笛を取り出し弄る。
綺麗な音色のそれは、意識を過去へと誘ってくれる。

  

 己の出身は町とも村とも呼べぬ場所であった。
発展途中だったと言えば良いか。
物心ついた時から、一人だった。

 親のことは何も知らない。
特別な何かがあったわけでもなかった。
剣の腕が一番に強いわけでもなく、頭が物凄く良かったわけでもない、ごくごく普通の少年。
同年代の子ども、皆と同じ師匠から剣術を習っていた。
その人はラダトーム城に勤務していた元衛兵。
育成で生計を立てていた厳しくも優しい男であった。

 今はもういない。
魔物が町を襲った時に犠牲になった。

 その後、知らせを聞いたのか、被害状況を知るためか、様子を見にきた兵士に城へ連れていかれたのだ。
頼るものがなくなり、打ち拉がれる己を御構い無しに…。

  

 ラダトームの王とて、何もしてこなかったわけではないだろう。
雨雲の杖を手に入れるためのガライの墓の修行システム。
太陽の石が城にあるにもかかわらずその情報を流す兵士をリムルダールの町に常駐させ、その石の一切の噂を城内では遮断した。
自由に歩けることを許された者の力と知恵を試すために…。
だが、そこまでしても竜王は未だ倒されていない。 

 追い詰められた時、偉大なる予言者ムツヘタよる導き。
『やがて、この地のどこかに、伝説の勇者ロトの血を引く者が現れる。その者が、竜王を滅ぼすであろう』
 王はその言葉を信じ、探しているのだ。竜王を討伐してくれる伝説の勇者の血を引く者を…。
だから、一滴でも混じっている可能性のある若者をかたっぱしから集め導こうとしているのだ。
藁にもすがる思いとはこのことだろう。

「今日もやるしかない」
 己にはもうこの道しか残されていない。
弱音はここまでだ。
今自分ができることは、ただ一つ。

前に進むだけだ。 

 アレフLv.14、初心に返る。