「しまった。ここはラダトーム城の入り口か」
覚えたての呪文は取り敢えず使う。
まさか、そこまで凄いことが起こるとは思ってなかった。
少し前まで、リムルダールの町から南下した場所で、金策と修行をかねてしていた。
そこには【ゴールドマン】がいて通常よりお金を所持しているのだ。
魔法の鎧(7700G)を購入する資金を稼いでいるところである。
これ以上強い武器は現時点でなく、防御を上げることで対策を取ろうと考えたのだ。
今は目の前に城壁を守る兵士が怪訝な顔をしている。
取り敢えず笑いラダトームの町に逃げる。
ルーラは瞬間移動の呪文らしい。なぜかラダトーム城限定だが……。
色々飛べたら楽だなのに、そこまで甘くないらしい。
これはリレミトと同じで消費が多い。
しかし、それさえ確保できれば、帰りの魔力を気にせずギリギリまで進めると言うことだ。
前回見つけることが出来なかった、ドムドーラの町に行けるか?
あの周辺はリムルダールの町より、やや強いモンスターがいる。
一つは【しりょうのきし】
見た目こそ【しりょう】と似ているが剣を持っており、その剣の扱いが上手い。
お陰で体力が削られる。
戦闘中の回復はもうできない状態なので、攻撃力が強い相手は色々ときつい。
もう一つは【よろいのきし】
圧倒的硬さと強さを誇っている。
しかもマホトーンの魔法を唱えてくるのでラリホー戦法を封じてくる。
その強敵オンパレードだが、一度でもその町たどり着けたら、そこを拠点にでき、先ほどいたリムルダールの町から南下した場所より効率よく修行ができる。
ルーラの呪文でラダトームの城に戻ってしまったので、予定を変更して砂漠地帯を目指す。
運が良く、あまり強敵に出会わずにドムドーラの町に着いた。
予想通り、砂漠を超えた場所にその町はあった。
いや、正確には嘗て町だったと思われる場所だ。
「ここがそうだったのか」
竜王に滅ぼされた町。
人は既にいなく、壊れた建物の残骸が毒沼に侵食されている。
商店街の名残かいくつか店のカウンターが残っていた。
更に外とは比べ物にならないぐらい強いモンスターが闊歩している。
あまりの恐々にしばし唖然としてしまっていたのだろう。
結論から言うとルーラは必要なかった。
気付いたら、ラダトーム城に戻っていたのだから…一瞬だった。
まだまだ強い相手がいる。
竜王はその頂点にいる。
そこいらのモンスターに手こずっているようじゃダメだ。
(俺は…勝てるのか?)
期待を背負って、それに答えられるのだろうか。
剣技が未熟でただただ我武者羅に強くなって行くモンスターと日々戦っているだけだ。
まだ誰も救っていない。
まだ何もできていない。
「畜生!」