Lv.8:戦士の指輪を見つけた。

 洞窟の少し入り組んだ奥に二つの宝箱があった。
その中に少しゴツめのしっかりとしたリングが入っていた。
名前の通り、攻撃力を少し上げてくれそうな気がする指輪だ。
もう一つは松明であった。 

 己が今いる場所は『岩山の洞窟』と言うらしい。
その名の通り、洞窟の周りにゴツゴツとした岩が多くあり、大きな岩をくりぬいたような形をしていた。
そこから地下へと続く階段がこの洞窟の入り口となっている。
初めて入ったロトの洞窟とは違い、中にもモンスターがうじゃうじゃいた。

 順調かと思いきやの最初の二つの宝箱以降は、道が入り組んでいて、他の場所へ行こうにも思うように進めない。
松明の明かりだけが頼りの暗い通路。
幅も狭く、不安を呼び寄せる。

 これといって収穫も無く、洞窟内をうろうろと往復する日々。
地下一階はまだ見知った敵も多く、倒すのもすんなり行き問題ない。
ぐるぐると彷徨うと何箇所か降りる階段を発見でき、地下二階との関連性の把握が必須となる。

 地下二階は更に複雑となり、やや敵も強くなっている。
洞窟内だけに出てくる特異な、一つ目の【メーダ】や巨大な蝸牛の【ドロル】は何か特殊なことをしてくるわけではないが、体当たりの攻撃が地味に体力を削られる。
そのおかげで、地下二階辺りは長居ができない。
その上、一度帰り道を間違えて、魔力配分が狂ったその時、赤い衣を着た人型のモンスター——【まどうし】によるラリホーの呪文攻撃。
急速な眠気に襲われ、抗おうとするも熱い炎の感触と不気味に笑う声だけが頭に響いた。

 

「………」
 もはや何も言うまい。
ラダトーム城からトボトボと出るのがすっかり馴染みになった気がする。
一度振り返り、城を見る。何度も助かるのは不思議な気持ちだ。
(所持金はきっちり半分取られているけどな)

 自分でもわかる。
己はモテ囃されていても実力が伴っていないと言うことを認めよう。
自分は帰還のお守りのおかげで、何とか死なないでいる。
そのため、無理しても進めるのではと勘違いしている気がする。
これは只の死に急ぎで何の解決にもならない。
勿論、己が全く強くなってないわけではない。
それは確かだ。
だからこそ、無駄な急ぎは禁物である。

 荒野を歩きつつ、計画を立てる。
打開策は防具強化、鉄の盾を購入し、物理攻撃の軽減を計る。
ラリホーとギラを撃つ問題の【まどうし】は戦う前の回復を怠らず、ヤバイ時は潔く逃げる。
逃げるのは恥じゃない。
生き抜く知恵だ。

 何度か窮地に追い込まれたがブラックアウトすることなく、逃げ帰ること数回。
「これで全部…か?」
 脳内マッピングでこの洞窟には何もないと言う結論だ。
収穫は戦士の指輪のみか。
既に3つほど所持しているが、一つ持っていれば十分だろう。

「売っても二束三文にしかならなかったけどな」

 アレフLv.8、苦労した割に拍子抜けるダンジョンである。