Lv.4:ギラを覚えた。

「これは強い!」
 ギラ、敵を攻撃できる呪文。
魔力消費が回復魔法のホイミの半分で、尚且つ、竹槍より強い。
魔力もここへ来て一気に上がったため、今まで以上に遠出ができる。
資金難のため未だに銅の剣すら買えない自分には強力な呪文である。

 これで気になっていた、ガライの町に行ける。
あの【ゴースト】だって一発で倒せる。深追いは厳禁だが、【スライム】をうまくいけば一撃で倒せる力もついた。
いざ行かん。

 北西にある森は避けて、ずんずんと進む。
強くなって来た気がする。
初めて目にする、灰色のローブを纏った人型のモンスター——【まほうつかい】にも遅れは取らない。さすがにギラ二発分であるから強いが、その分資金の多く持っていて美味しい。
しかも、物理攻撃はたいしことがなく、こちらの魔力の枯渇さえなければ、良い敵かもしれない。
ただし、向こうのギラ攻撃を除く。
こちらにも魔法攻撃手段ができると、相手もそれができるモンスターが現れるとは、世の中そんなに甘くない。甘くはないが、ガライの町を拠点に変えるのも悪くないかもしれない。

 手応えを感じ嬉々として、問題なく町に到着する。
「ここは昔語りの町ガライよ」
 優しげな女性が説明してくれた。
話を聞くとこの町は偉大な吟遊詩人のガライが作ったとされている。いつぐらい前の人だったのか、現在は既に時の人らしい。
どう言う偉大な人であったかは謎だが、慕われていたのかもしれない。
(町の名前がガライって言う程だしな)
 小さいながら華やかな町を巡る。

「私は聞いた。姫をさらった魔物は東の方へ飛び去ったと」
「噂では、どこかの洞窟に姫が閉じ込められていると言う」
 又聞きのような曖昧な情報が歌に乗り飛び交う。
姫の捜索隊が壊滅したことを思い出す。
竜王を倒すと言う目的が分かっているにもかかわらず、その正体は闇に包まれている。
不気味すぎて、倒せるかすら分からない。

 次の行き先を思案しながら宿へ向かう。
姫が拐われたとされる東か、近場の南か。
「いらっさい。一泊25Gだよ」
「………」
 待て、高すぎるだろ。思わず硬直してしまう。
「どうしたんだい?」
「や、やめておきます」
 すごすごと退散する。
いやいやいや、ラダトームの町の宿屋が6Gで、こっちが25Gって何倍だよ。4倍以上だ!
値上がりしすぎだろ。ラダトームの町の宿が、如何に城の恩恵を受けているのかが、わかり痛感する。
ダメだ。ここを拠点とか甘い考えだった。このままだと赤字まっしぐらだ。

 ラダトームの町とガライの町の往復修行ランが決定された瞬間であった。

 アレフLv.4は資金繰りの厳しさを知った。