それぞれの恋愛観

「好きな人ね…」
 何故そういう話題になったのか覚えていないがまあよくある話である。
要は暇を持て余した者たちの話題探しの一種であろう。
丁度この場にいる既婚者は二人。
「いや、俺はまだしていない」
 アレフは反論する。
「まだだろ? てことはする相手もいて、未来の確定事項というわけだ」
 いいよなぁっと羨ましがるはロト。伝説の勇者になる者だ。
「待ってくれ、ご先祖。あなたも何れするだろう!?」
 してくれなきゃ『血を引きし者』と称号を得たアレフの立場がない。
「オレって本当に結婚できるのかな?」
「本気で言ってます!?」
 ガチで不安になる要素しか言わないのやめて欲しい。
「オレ、恋愛したことない」
「………」
 アレフは絶句した。
自己の仲間のことを思い出しながら考えるロトに(己の血ってマジで関係なかったのかのしれない)とアレフは少し絶望する。

「恋愛。難しい話になったね」
 もう一人の既婚者であるアベルは顎に手を当てて考える。
「恋愛結婚?」
 興味を持っているが二の足を踏んでいるアルスが質問する。
「一応、恋愛なのかな…ぶっちゃけると結婚してから恋愛した感じ」
 最初、盾欲しさに首を突っ込んだ何て口が裂けても言えない。
「もちろん、ちゃんと奥さん好きだよ」
「こう言うのも憧れるね」
 気になる子はいるが恋愛に発展する気がしないアルスなのである。
「はれた惚れたって、今はどうでもいいだろ」
 居心地が悪い話題を切り上げたくてソロは叫ぶ。
「好きな気持ちって持っちゃダメなのか?」
 ニコニコと聞いていたローレがソロに疑問をぶつける。
「ダメじゃねぇけど、恋愛話なんてケツが痒くなるだろ」
 追及されるとは思っていなくて、少しタジタジになる。

「切磋琢磨する為に必要な感情でもあるが、時に血みどろの争いを生む」
 何を思い浮かべたのか唐突に語り出すレック。
「血みどろ?」
「あー」
 疑問に思うローレと幾多の修羅場を思い出すアルス。
「ぼく自身はありませんが恋愛は素敵だと思いますよ」
 すれ違いこそは悲劇を生むが、愛は思いやりとなる。
時に暴走するのが玉に瑕だが…。
「ナイン君も現場いっぱい見た?」
 苦笑いを浮かべつつアルスが聴くと、にこやかに肯定する元天使のナイン。
「オレも(自分の姿が)見えない時に色々見ちまったなー」
 っと、遠い目をするレック。

「兄弟愛とか、家族愛とかも勇気の糧となるよな」
 恋愛とは違うかもしれないがっと前置きして、エックスは力説する。
「それわかる! 仲間も大切だよな!」
 意気投合するレックとエックス。

 ワイワイ賑やかな中、こちらに話題を振られませんようにと気配を空気にしている二人。
共に振られても答えにくい立場である。

 選択と自由、それが血みどろの争いを生むのである。
アベルのようにうまくごまかせる自信がない。

「お前らはどうよ?」
 ロトの言葉…。ついに来た。
さて、どう答えよう。

【それぞれの恋愛観】